7th HopeのBlog〜五線紙のすみっこ〜

おもにボカロ曲・DTMの制作に関することなど

丸の内でいこう(クラウドナインの高度 〜silver lining〜 その3)

 

はじめに

この記事は自作曲「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」について少し前に書いた以下2つの記事の続編です 

 

7th-hope.hatenablog.com 

7th-hope.hatenablog.com

 

最初の記事のほうで楽曲の制作に至るまでの経緯を含めた全体的なことを書いていて、「その2」では歌詞の側面から関連する楽曲との接点を説明しているのでこの記事に関連してもしどちらか一方だけ読んでいただけるならば1つ目の記事がよいかと

 

さて今回「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」という楽曲を投稿したところ

和音の響きがきれい
どうやってメロディーを組み立てたのか 

といった感想・質問などいただいたので
そのあたりに答えることも念頭に置きつつ主として作・編曲の側面から2回に分けて書いていきます

 

以下、楽曲リンクです

YouTube

www.youtube.com

ニコニコ動画 

www.nicovideo.jp

 

ネタばらし

かれこれ1年近く前になるのですが
昨年9/20にTwitterこんなアンケートをツイートしていました

 

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半分以上はネタであってアンケート結果がどうなろうと本人はまぁ完成させるつもりでいたのですが、実はこのツイートで「できてしまいそう」と言っていた曲が今回投稿した「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」なのです

そんな前に作ってたの?と思われるかもですが
前2記事にも書いたとおり昨年夏に作り始めてitsmeさんにイラストを依頼した秋には大体できてたので…

 

ところで
ちょうどこの日すなわち2020年9月20日wav出力したファイルが残っていたので聴き返してみたところ、2サビまでで切れててブリッジ以降がなかったりアレンジが今と全然違ったりはするもののメロはほぼ最終形のまんま、歌詞も一部入っていないけど9割がた今と同じ
つまりこの時点で詞とメロはほぼできていました

 

ちなみにそこに至るまでの流れはというと

今と全然違うAメロがあった続いて今のBメロに近いものができたもののそこで行き詰まる→ Aメロを捨てて考え直すサビ部分がなんとなくできてきて作り込み→ Aメロ作り直し

こんな感じでした、たしか
そして歌詞はサビ部分作り込みと並行して書いてました

事実上、比較的素直なBメロ部分からできたというのはなんとなく見当がつくのではないでしょうか

 

丸の内でいこう

作曲・編曲をする人ならだいたい一聴してわかると思いますが
上記のアンケートに「丸の内進行の曲ができてしまいそう」とあるとおりこの曲の多くの部分はいわゆる丸の内進行でできています

しばしば話題になるように、(キリがないので具体的には挙げませんが)丸の内進行の曲がここ数年のヒット曲にとても多いのでまたかよ?とか今更?とか何周遅れだよ?っといった受け止められ方もあり得るかなぁ…とまぁそんな背景から上記のアンケートをツイートしてみたわけです…とは言え上述のとおり私自身はどのみち完成させるつもりだったのですが

具体的にこの曲のどの部分が丸の内進行かというと、サビが全部丸の内進行です
すなわち1サビ16小節、2サビ&ラスサビ各20小節の計56小節
曲全体で108小節あるので丸の内率50%強といったところですね

 

そもそもの話

ここまで何の説明もなく「丸の内進行」なるワードを連発してきましたが今更ながらシンプルに説明すると丸の内進行とは....

|Ⅳmaj7  Ⅲ7 |Ⅵm7  Ⅴm7 Ⅰ7|〜

これです、この2小節を比較的延々と繰り返します

ディグリーネームで表記しましたがCメジャーキーだったら

|Fmaj7  E7 |Am7  Gm7 C7|〜

となります

椎名林檎の初期の名曲「丸の内サディスティック」(1999年)でこの進行が多用されていることからこう呼ばれています(なお「丸の内サディスティック」では2小節目のⅤm7→Ⅰ7の部分が単にⅠ7となります)

ただし「丸の内サディスティック」がオリジナルかというとそんなことは全然なく、ルーツはグローヴァー・ワシントン Jr.のJust the Two of Us(1980年)あたりとされ、その後アイズレー・ブラザーズBetween the Sheets(1983年; 邦題「シルクの似合う夜」)など1980年代以降おもにR&B方面で多用されてきました 

とは言えJust the Two of Us以前にも類似の進行はあったとも言われており、本質的にはよく使われるコード進行のひとつに過ぎないと思います
なお、2小節目後半がⅠ7のものを丸の内進行、Ⅴm7→Ⅰ7のものをJust the Two of Us進行と区別するケースもあるようですがあまり意味がないのでここでは区別しません

 

以下、参考動画を挙げておきます: 
Just the Two of Us も Between the Sheets も40年も前の音源とは思えない雰囲気ですね

Grover Washington Jr. - Just the Two of Us (feat. Bill Withers)
The Isley Brothers - Between the Sheets (Official Audio)
東京事変 - 幕ノ内サディスティック - YouTube

※「丸の内サディスティック」は公式音源がupされていないため東京事変名義のライブ音源(タイトルは「幕ノ内サディスティック」)を挙げています

 

とはいうものの工夫

さて制作の話に戻ります

丸の内進行でも気にしない!
とは言うもののありきたりでは面白くないので自分なりに工夫したいものです…まぁこれは今回に限った話ではないですが

ただ丸の内進行では2小節という短い単位を繰り返すことになるので工夫するにあたってはこの点を考慮するのが良さそうです

 

そこで以下のポイントを意識しました:

  1. ビート感すなわちリズムアレンジに変化をつける
  2. 和声とメロの展開に気を配る

 

まず1について
この曲のサビは4小節かたまり×5回の20小節で構成されていますが(ただし1サビは1回分短く16小節)その3巡目つまり912小節でハーフテンポ(いわゆる半テンってやつですね)にしています
そして13小節目からふたたび元のテンポに戻るもののキックを4つ打ちにしてその前の1〜8小節目とは違う感じに(かつBメロに近いビート感とすることで唐突さを抑制)しています

 

一方、2について 
メロも同様に18小節、912小節、1320小節の3つの部分で構成しています
そして和声に関しては丸の内進行を土台としつつ、メロの展開を意識しながらオルタードテンション多めに色付けしていきました
オルタードテンションというのは平たく言うと本来の音階にない音を和音に重ねたもので、適切に使うことによって通常とはちょっと違う響きを表現できるのですがメロディーとの兼ね合いなど注意すべき点もあります
この点に関しては次の記事で詳しく書いていく予定です

おわりに

今回は自作曲「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」の制作に関して、作・編曲の観点から振り返りました

今回説明し切れていない部分については近日中に次の記事に追記する予定です