7th HopeのBlog〜五線紙のすみっこ〜

おもにボカロ曲・DTMの制作に関することなど

ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜 個人的振り返り

はじめに

この記事は2024年1月19〜21日にかけて開催されたゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜についてのごく個人的な振り返りです(ツイプラのイベントページはこちら↓)

twipla.jp

 

私自身も星あかりのパヴァーヌという楽曲でこの投稿祭に参加しましたがこの楽曲については下記の記事にいろいろ書いたのでここでは触れません

7th-hope.hatenablog.com

 

ゆっくり限定ではない

この投稿祭はBPM135以下の速すぎない曲を投稿し合うというイベントでした
すなわちゆっくりな曲限定ということではなく、スローテンポ〜ミドルテンポまでかなり間口の広いレギュレーション
この点はイベントのTwitterアカウント名が @middleslowvoca であるところにも現れています

 

総じてハイクオリティ

「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」のタグがついた動画をニコニコ動画YouTubeで確認したところそれぞれ約240曲、約40曲ありました(重複あり; YouTubeではタグをつけてない人もいそうなので実際の投稿数はもっと多いかもしれません)

今回はイベント期間中おもにニコニコ動画を中心に巡回しまして全曲ではないですが9割がた視聴した印象としては「良いな」と思える楽曲が多かったです

BPM=135以下でテーマは夜」という適度に緩いレギュレーションが絶妙に功を奏した結果、各制作者が存分に個性を発揮した作品が集まり、かつ頑張れば全曲視聴も十分可能な規模となった…そんな印象です

個性的で多彩な作品が集まったのはジャンルに関する縛りがないのも大きそうです
スロー〜ミドルテンポ限定とはいえバラード等の壮大な曲が多いということもなく、むしろさまざまなアイデアを3分程度の尺に上手にまとめ上げた作品も目立ちました

これまで接点のなかった方の楽曲も聴けたし自分の楽曲にもまずまず反応いただけたので率直に参加してよかったと思いました
イベントを主催してくださった皆さんにはとても感謝しています

 

界隈の傾向

自作曲を制作して動画サイトに投稿するようになって8年近く経つのですがここ数年おもにニコニコ動画において「○○祭」のような投稿祭が頻繁に行われるようになった印象があります…ちゃんと調べたわけではなく印象ですが

また、VOCALOIDおよびその他合成音声を使ったオリジナル作品の投稿数自体も近年かなり増えています
これは単なる印象ではなく実際、

 ・2012年頃をピークに一旦低下し2017年頃に下げ止まり
 ・その後は再び上昇に転じ2020年には2012年を超え、2022年では2012年の2倍以上

との調査結果があります(出典↓  lefthorseさん)

その一方でニコニコ動画の有料会員数は以前より減少していて[*]「楽曲の投稿数は増えるのにリスナーは減っている」という供給過多の傾向が年々高まっているというのが界隈の共通認識としてあると思います

[*]そもそもボカロ曲はとっくにニコニコ動画の主要コンテンツではないという話もありますが

 

要するに(楽曲が圧倒的に魅力的な才能溢れるごく一部の人を除いては)

 作品を発表してもリスナーが広がらない、まだ聴いてもらったことがない人に届かない

という傾向が強まる一方、という状況です

このような状況の中でイベントと無関係に単発で投稿したところで注目されることは難しいため、少しでも新しい人に聴いてもらう手段のひとつとして投稿祭が活発化しているのでしょう

 

イベントに参加するということ

私自身は、ボカコレはじめ数々のイベントにどんどん参加するのは時間的にも制作能力的にも難しいのですが、一方でイベント等と関係なく完全マイペースで地道に活動するだけでは刺激も進歩もないかなぁとも…元来怠け者なので目標や締め切りがないとなかなか進まないですし

なのでよさそうかなと思えるイベントには可能な範囲で参加しつつ作品のクオリティや制作ノウハウを向上していければと考えています

 

作り手同士で互いに仲間内で聴いて(さらには社交辞令のようにコメントし合って)何になる?

とか

(作り手でない)真のリスナー層に届けることことが重要

といった指摘は一理ありますがそれらは別に今に始まったことでもなく
私もかつてはバンド活動をしてライブハウスに出演させてもらっていましたが見ず知らずのバンドのライブにお金を払ってきてくれるお客さんがそうそういるはずもなく、駆け出しのうちは知り合いのバンド仲間同士での手売りが主体というかほとんどなわけで

ボカコレで上位にランクインするのが目標、そのために相互リスインも頑張る!
というのもそれが励みになるのなら全然否定しませんし
一方でイベントからは距離を置いて地道に活動するのが性に合うという人にとってはそれがベストなのでしょう

業務としてやっているわけではないので最適解は人それぞれです
その人にとって最もモチベーションを保てるやり方が正解であって他人がとやかく言うことではないのかなぁと…考え方の違いを受け入れる寛容さを持ちたいなぁと思っています

 

個人的ピックアップ

最後に、ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜に投稿された楽曲の中でとくに印象に残った曲を12曲挙げます(順不同; だいたい私が聴いた順 ≒ニコニコの投稿順)

他にも良い作品はたくさんあってイベント期間中そこそこ紹介ツイートも流しましたがすべて挙げると膨大になるので断腸の思いで厳選した12曲

あくまで私にとって印象に残ったものなので私の好みが目一杯反映された選曲です

 

(1) 寒い夜 / 江戸川リバ子さん

サウンドのコンセプトが明確で穏やかな心地よい楽曲、チープな音色も効果的
BPM=90

 

(2) LOOP UP / vuefloor & mayoiさん

ギターやスネア/クラップのタイム感が絶妙、揺らぎつつキレがある感じ
BPM=86

 

(3) アナタノナニカ / TAiYAKiさん

めまぐるしく展開しつつも統一感ある、これだけアイデア詰め込んで2分台
BPM=120

 

(4) Rのヒトリゴトあじあさん

ブラスの裏メロとか後半の展開とか好きです
BPM=100

 

(5) 遺作になってもかまわない / 織部リョウさん

ストレートな主張をありのまま表現しつつ楽曲として昇華できてて素晴らしい
BPM=85

 

(6) anemome / 橘レイさん

切なくも美しい作品、2コーラス目の演出も効果的
BPM=80

 

(7) まもなく、 / アカヨウチュウさん

イデアが素晴らしいのに加えてサウンドも良い
BPM=95

 

(8) おとぎ話のように / Tokage 100%さん

やや強引かと思える展開でこれでもかと攻めつつ絶妙に心地よい不思議
BPM=92

 

(9) やさしさにつつまれてくれ / おあがりさん

ファンクのレトロなグルーヴ感をベースとしつつ現代的なアプローチで意表突く
BPM=100

 

(10) 水底にて / obayoheiさん

水底をイメージしたサウンドが綺麗、繊細なアレンジが光る
BPM=74

 

(11) この痛みと、都合のいい嘘に / ロップさん

音の質感が生々しく歌詞&メロともに心に響く
BPM=79

 

(12) Insanity Soundscape / 早坂タカアキさん

サウンドの組み立て・構成・展開あらゆる面にセンス感じる
BPM=80

 

心地よくコンパクトに(星あかりのパヴァーヌ その2)

はじめに

この記事はこちらの記事の続編です:

7th-hope.hatenablog.com

今回は「星あかりのパヴァーヌ」という曲のサウンド面について

 

構想段階

この曲の制作に取り掛かったのはたしか11月の後半でした
ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」の2ヶ月前くらいですね

構想段階で考えたのは「コンパクトな曲にしよう(いろんな意味で)」という点でした
目を引くような派手さはないけれどなんとなく印象に残るような曲
小品」というとちょっとかっこ良すぎかもですがそんなものを目指して…という感じ

なのであまりあれこれと要素を詰め込まない方向で
楽曲の形式としては当初「A - B - A」のいわゆる小三部形式をイメージしていました(後述のように結果的にやや違った形になりましたが)

 

トラック少なめ

まず「コンパクトな曲」ということで音数が少なめ&編成もシンプルなのでトラック数が少ないです

ドラム&パーカッション類で約10トラックの他はベース1トラック、ナイロン弦のアコギ1トラック、ピアノパッド3トラック、ハープ1トラックにボーカル・ハモリ各1トラック[*]

以上で全てなので私の普段の曲に比べるとかなり少ないです…1/3くらい?

しかしトラックが少なければミックスは楽かと思いきやそうでもなく…
音数が少ないぶん細かい粗が気になりやすくてけっこういろいろ調整しました(まとめ切れたかというと怪しいですが)

[*]これら以外にグループトラックやエフェクトのセンド等は普通にあります

 

構成

構想段階では「A - B - A」の小三部形式をイメージしていましたが実際には

「A - B - A' - C」

という形になりました[†]

「A」と「A'」はコード進行ほぼ同じでメロも後ろ半分がほぼ同じ
また「C」は「A」および「A'」後半の進行と同じでメロとリズムに変化をつけたものなので「A''」と呼んでも良いようなもの
…なので小三部形式ではないもののそれに近い感じではあるかな

[†]細かく言うと1番では「A」と「B」の間に間奏が入りますが進行は「A」と同じでリズムを少し変えたもの(2番は「A」なしで間奏のあとすぐ「B」)

 

1番の「B」〜「A’」〜「C」までのメロ譜は下のとおり
この範囲にだいたい全ての要素が含まれます

 

テンポはBPM=90のミドルテンポで一定ですが単調になりすぎないよう「A」「A’」と「B」「C」とでビート感に変化をつけ

アレンジはシンプルに抑え、演出に相当する要素は「B」→「A’」の変わり目でアクセントとして変拍子のブレイクを入れ、そのあとハープを重ねたりしたくらい

といったところです

 

ゆっくりというよりは

この曲のBPMは上述のとおり90ですが私の感覚では特別ゆっくりというよりかは

「ちょうど心地よいくらい」

のテンポだと漠然と思っていました

私の他の曲と比べてどうなのか?ふと気になったので、昨年3月に配信リリースしたアルバム「カラフル・シンジケート」の収録曲10曲のBPMを確認して今作とともにBPM順に並べてみたらこうなりました↓
先頭の数字がBPM, カッコ内はアルバムの曲順です)

 

 88 PGF〜妄想彼女はフレンチトーストの夢を見た (8)
 90 星あかりのパヴァーヌ
 92 クラウドナインの高度 (4)
 94 スノードロップと明日への歌(英語ver.)(3)

 

115 ニケとリリエンタール (1)
118 帷子ノ辻で乗り換えて (6)
126 餞のロンド (7)

140 クロワッサンの想い出 (10)

 

170 虹とバーガンディー (2)
176 Almost Green (5)
178 環状線とレモネードの魔法 (9)

 

BPM=88〜94に「星あかりのパヴァーヌ」を含む4曲が集中しています
「ちょうど心地よい」組です

一方、BPM=170〜178というかなり速いテンポの曲も3曲ありますが…
 これら3曲はいずれも途中いわゆる「半テン」(=半分のテンポになること)するところがけっこうあります
半テン部分についてはBPM=85〜89ということになるので「半テンしたときちょうど心地よいテンポの曲」であるようです、特に意識していませんでしたが

 

おわりに

「星あかりのパヴァーヌ」という楽曲について今回はおもにサウンド面の背景を記しました
最後まで読んでいただきありがとうございます

 

楽曲リンク

YouTube

youtu.be

 

ニコニコ動画

www.nicovideo.jp

 

ピアプロ

piapro.jp

【歌詞】星あかりのパヴァーヌ

この楽曲に関する記事はこちら:

7th-hope.hatenablog.com

 

星あかりのパヴァーヌ by 7th hope

夜の海の色素を吸い上げたかのごとく

空は藍より深く

天上の星は瑠璃色の水面を照らす

冬の海の匂いがする

 

言葉の淵から繰り出される

答えのようなものが放つ違和感の正体を

ねぇあなたは何て呼ぶのだろう?

 

答えが欲しかったんじゃないのに

悩むことさえ不自由だ

確かにそこにあったものさえも今では

なかったことにされてしまった

 

岬から四方照らした光は絶え

星あかりだけ頼りに明けない朝 待ち続けてる

 

 

誰もが何かに突き動かされ生きると

語ったのに

論理の渦の向こう側で

今あなたは何が見えてるの?

 

どこかで消費されたはずの何かを

謎解きのようにかき集め

適当に折り合いつけてみたところで

そこに神は宿るのだろうか

 

さざ波の音が涙の跡を撫でる

海風が星あかりの砂浜を通り過ぎてく

 

AIの海のほとりで(星あかりのパヴァーヌ その1)

 

はじめに

長らく更新していなかったのですが久しぶりに

最近投稿した「星あかりのパヴァーヌ」という楽曲について書いていきます

 

 

この楽曲について

ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜 参加曲

昨年つまり2023年のたしか秋頃のこと
Twitter (X)のTLで「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」という投稿祭が2024年1月に開催されることを知りまして...(告知は6月に出ていたらしいですが気づいてなかった)

ツイプラのイベントページ↓に記載のとおり、BPM135以下の速すぎない曲を投稿し合うというお祭りです

twipla.jp

 

ところでこの「ゆっくりボカロ曲投稿祭」今回2回目で前回は2022年12月初旬に開催されたのですがそのときは制作が間に合わず参加できなかったのです

その間に合わなかった曲はこちら↓の「餞のロンド」という曲(2022年12月31日投稿)

【初音ミク】餞のロンド【オリジナル曲】 / Pyxis Rondo (feat. Hatsune Miku) - YouTube
【初音ミク】餞のロンド【オリジナル曲】 - ニコニコ動画

 

ということもあって今回こそは参加しよう!と決意したのでした

そうしてできたのが今作「星あかりのパヴァーヌ
なお各サイトの動画説明文にも記載のとおりBPMは90です

 

歌詞 〜AIとの関わりについてほんのり触れてみた

「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」は上述のBPMに関する規定に加え曲のテーマが夜であるこが必須事項となっています

そこで歌詞は冬の夜の海をイメージした描写から始まります

夜の海の色素を吸い上げたかのごとく

空は藍より深く

天上の星は瑠璃色の水面を照らす

冬の海の匂いがする

ただこの「冬の夜の海」というイメージは表層的なものであって実は

AIとの向き合い方を自分なりに整理してみた

というのがこの曲の真のテーマです

 

この2年ほどの間にStable DiffusionやChatGPTに代表されるAIが発展して様々な創作分野にもインパクトを及ぼすようになってきました

仕事や日常生活の中で私もこれらのAIに触れる機会がありますが、それ以前に私自身、本業では長らく機械学習の研究開発に携わり、また博士論文のテーマは統計的言語モデルに関する研究だった…というくらいにはこの分野に関わってきましたので

とそんなこともあり一度AIとの関わりについてふんわりとでも形にしておきたいなと思ったのでした

 

とはいえ現時点のAIは精巧なツールに過ぎないと思っていて(意識や意志は持たないですし)…なので殊更に畏れたり礼賛したりするつもりもなければ批判するつもりもなくてただそういうものとして受け止めれば良いのかなと思っています

なのでAIに対して特に強い主義主張がこめられているというわけではないです

 

ちなみに歌詞の中では「言葉の淵」とか「論理の渦」などのフレーズがAIのメタファーとなっています

言葉の淵から繰り出される

答えのようなものが放つ違和感の正体を

ねぇあなたは何て呼ぶのだろう?

論理の渦の向こう側で

今あなたは何が見えてるの?

 

神は細部に宿る

神は細部に宿る」という言葉があります

由来は定かではないようなのですが「細部までこだわり抜くことによって神が命を宿したかのごとく完成度が高まる(逆に細部をおろそかにしてはいけない)」という意味で使われます

実用品であれ創作物であれ、大筋では良いものであっても細部の粗が気になると価値が下がってしまうし、創作物の場合は作品にのめり込む気がなくなってしまうものです

 

どこかで消費されたはずの何かを

謎解きのようにかき集め

適当に折り合いつけてみたところで

そこに神は宿るのだろうか

 

AIどうこうとは必ずしも関係ないですが作品として世に出すからには誰に気づかれるわけでなくても細かいところまで気を配って完成度を高めたいと常づね思っています

 

タイトル

これも動画説明文に記載していますが、間奏のメロはラヴェルピアノ曲亡き王女のためのパヴァーヌ」のフレーズを引用しています

穏やかで美しい曲で以前からいつか作品に引用したいと思っていたのが今回実現し、そういったこともあり「星あかりのパヴァーヌ」という曲名にしました

パヴァーヌ」という言葉自体は歌詞の内容と特に関連があるわけではないのでぶっちゃけ「星あかりの夜」とかでも良かったのですが…(^^);
ちょっと何だろう?と思う言葉が曲名に入っていたほうが印象に残って良いかなという思いもありこのタイトルにしました

 

楽曲リンク

YouTube

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ニコニコ動画

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ピアプロ

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歌詞

7th-hope.hatenablog.com

 

おわりに

今回は「星あかりのパヴァーヌ」という曲が生まれた背景やテーマ・歌詞について紹介しました
サウンド面については別記事であらためて書く予定です

またこの楽曲が参加している「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」についての感想も後日書こうと思っています

癒しのローズピアノ(虹とバーガンディー その2)

はじめに

この記事はこちらの記事の続編です:

7th-hope.hatenablog.com

 

癒しのローズピアノ

構想の段階

曲を作るときはまず最初の段階で大まかな曲調…テンポ・ビート感・主要なパート等を仮決めするのですが
今回はアップテンポ(160BPM以上[*])ただしメロはあまり詰め込まずパート数も多くなく空間を残す感じに、そしてローズピアノをメインに据えたいというふうに構想しました

なぜローズピアノかというと…単純に好きだからです、けっこう以前から

なおローズの音源はNative InstrumentsのKOMPLETEに含まれる SCARBEE MARK I を使用しました[†]

[*]最終的には170BPMになっています
[†]一部、同じくKOMPLETEに含まれるSCARBEE A-200(←ローズとは別のエレクトリックピアノ ウーリッツァー A-200をサンプリングした音源)もレイヤーしています

 

そもそもローズピアノ

ローズピアノRhodes Piano)はピアノの代用品として開発されたエレクトリックピアノ(電気式ピアノ)の一種[*]で1940年代にハロルド・ローズ(Harold Rhodes)氏が開発しました
そもそもの目的は前線の兵士を慰安する目的だったとか

ピアノとはいうものの金属製の音叉をハンマーで叩いた音を増幅する仕組みであり音色はアコースティックピアノとは大きく異なります

かつてはフェンダー社と提携して製造・販売していたことからフェンダー・ローズFender Rhodes)と呼ばれていました

詳しくは私が説明するよりもこのあたり読んでいただくのが良いかと
↓↓↓
ローズ・ピアノ - Wikipedia
エレクトリックピアノ - Wikipedia

[*] 電子ピアノ(=電子回路で音を生成)ではないです

 

有名曲

ローズピアノは1970年代頃からジャズ/フュージョン、ロック、ポップスなど様々なジャンルで使われていますが私が真っ先にイメージするのはチック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエヴァーの代表曲「スペイン」(1972)です

www.youtube.com

 

往年の洋楽ならビリージョエルの素顔のままで(Just the Way You Are)(1977)とか10ccの I'm Not in Love (1975) あたりが有名でしょうか

最近のJ-POPの楽曲ではポルカドットスティングレイのJET (2020) という曲がとても好きです (ポルカの曲はだいたい全部好きですが 笑)この曲のエレピはローズそのものではないかも知れませんがまぁ似た系統の音ということで

 

www.youtube.com

 

アレンジに関して

編成はシンプル

今回の楽曲「虹とバーガンディー」の話に戻ります
上述のように主要パートの数はあまり多くなく、ドラム、ベースを除くとローズを中心として左右からコード感を補うパッド系、その他はストリングスやクラビが時おり入る程度のシンプルな編成です

あとは歌詞に合わせてアラーム音(2種類)とかサイレン音を散りばめたり
さらにオケにスタッターの効果を加えたり[*] ボーカルチョップを入れてみたり[]…まぁこのあたりは演出の領域

ただ完成してみるとそれほどローズメインという感じでもなく…この点はアレンジ力不足&プロデュース力不足かなぁと (-o-);;

[*]iZotopeのStutter Edit 2を使用
[†]Cubaseサンプラートラックでスライスした声をGroove Agentで鳴らしてます

 

♭Ⅲ好き過ぎ問題

和声的にも基本的にはシンプルで複雑なことはほぼしてませんが ♭ⅢmM7というコードを何ヵ所か使っています
mM7は通常そんなに多用するものではないのですがそれはさておき ♭Ⅲ好き過ぎ問題 というのがありまして…

|Ⅲm7  |♭ⅢM7  |Ⅱm7  |〜

といった進行を私は使いがちで(♭ⅢM7は♭Ⅲ6となることもあり)過去曲でも使ってないほうが珍しいくらい[*]

[*]メロとの兼ね合いで♭Ⅲdimとなる場合もあり

 

♭Ⅲ6や♭ⅢM7を理論的に説明づけるなら同主単調からの借用すなわち準固有和音のひとつであって別に特殊なものではなく
♭ⅢM7(or6)の部分をⅥm7かⅥ7にすれば普通に強進行(四度進行)です

Ⅵm7の代わりに♭Ⅲ6を持ってくる進行は「カブトムシ」等のaikoの楽曲で多くみられることからaiko進行と呼ばれることもあるようです

Ⅵと♭Ⅲは五度圏でちょうど対面に位置するので、借用によって半音下降が生まれるという点ではいわゆるツー・ファイブ・ワン(Ⅱm7 → Ⅴ7 → ⅠM7)においてドミナント7thを裏コードで代用するのとちょっと似ています

 

ひと工夫

今回の曲でも制作の途中で手癖のように♭ⅢM7を使っていることに気づき…

工夫がなさすぎるんじゃないかこれ?と思った節もありちょっと変化を加えてみた結果
下記4小節目のように♭ⅢM7の後ろに♭ⅢmM7を挿入した形となりました

サビの後半にも同様の進行を繰り返しています

mM7は根音省略するとaugの構成音になるだけあってちょっと複雑な響きですがこの流れ、これはこれでどっかで聞いたことある気がします(けどわからない

まぁ所詮コード進行は既存の何かの組み合わせなので

 

 

おわりに

「虹とバーガンディー」という楽曲の制作に関して、今回は主に音楽面の背景について記しました

 

楽曲リンク

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ニコニコ動画

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ピアプロ

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虹とバーガンディー

はじめに

先日投稿した「虹とバーガンディー」という楽曲について その1
今回はおもに曲名と歌詞についてあれこれと

 

楽曲リンク

YouTube


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ニコニコ動画

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ピアプロ

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この楽曲について

無色透名祭

この曲は2022年7月28日から31日にかけてニコニコ動画で開催された無色透名祭に投稿した楽曲に動画をつけて本人名義で再投稿したものです

 

このイベントは楽曲制作者が誰か分からない形をとり、さらに動画には白背景に歌詞のみという制約が課されたイベントでした

およそ3000曲もの作品が投稿された中、この曲は平凡な再生数でしたがマイリストや「いいね」の数はむしろ普段より多くいただいたほどでした

 

事前の想定をはるかに上回る投稿数となったことから課題も指摘されていますが総じて良いイベントだったかと…次の機会があればまた参加したいと思っています

 

無色透名祭のときの楽曲リンクはこちら↓

www.nicovideo.jp

 

曲名

「虹とバーガンディー」という曲名、虹はともかく

バーガンディーって何やねん?

と思う人が多いのではないかと思いますがバーガンディー(burgundy)とは
ワインの産地として知られるフランス東部ブルゴーニュ(Bourgogne)地方の英語名でありそして赤ワインに似た暗い赤色つまりワインレッドを表す色名でもあります

ひょっとしてファッションやコスメに興味ある系の人には比較的なじみのあるワードなのかもしれないですがよく知りません (- -);;

あるいはギターやベースに詳しい人だったらリッケンバッカーの限定カラーであるバーガンディーグローが思い浮かぶかも?

 

動画ではミクさんがワインレッドの衣装を着ていますが要するにバーガンディーこの曲のヒロインを指しています
もうひとつのキーワードであるとともに色彩を強く意識した曲名というわけです

 

なお今回、英語タイトルは

Burgundy Waiting for a Rainbow

としました[*]
単に ”Rainbow and Burgundy” ではなにか違うと思ったので…
このフレーズは私が好きな小説のひとつ、逸木裕さんの「虹を待つ彼女」の英語タイトル "A Girl Waiting for a Rainbow" へのオマージュとなっています
とはいえ曲の内容と小説との関連性はまったくありませんが💦

[*]海外からのアクセスも多いYouTubeでは毎回、英語タイトルもつけています

 

歌詞についてなど

歌詞そのものはいつもどおり別記事に記載していますが
この曲ではイントロ部分や間奏部分で歌詞には記載していないパートが歌われています

動画では以下の歌詞がスクロールして流れていくのですが、このパートは日本語と英語で別々の文でありながら発音がほぼ同じとなるように構成されています

わき出す    walking dusk
感情      and your
そう?     soul
ざわ      the words
めく      make you
かたち     can touch
まわっ     my world
てる      tell you
今       it's my
から      color
染まって    somewhat
ゆく      you could
浅い      assign
夢       you may...

まぁ文の内容は日本語・英語とも何のことやらよく分からない感じで一種の言葉遊びなんですがヒロインのあやふやな心理を表現しているという狙いもあります

さらに曲名と同様、色彩を意識した要素も盛り込んでいますが
これは無色透名祭にあえて色彩を意識した楽曲で参加しようというひねくれた意図があったためです

 

なお全体の歌詞はこちら:

7th-hope.hatenablog.com

 

おわりに

今回は「虹とバーガンディー」という楽曲の曲名と歌詞について書きました
サウンド面に関してはあらためて別記事で書く予定です

【歌詞】虹とバーガンディー

この曲に関する記事はこちら:

7th-hope.hatenablog.com

 

 

虹とバーガンディー    by 7th Hope

イヤホン越しにアラーム響く
あいまいな記憶と軽い眩暈
知ってた
理由なんて後付け辻褄合わせ
浅い夢から醒めない迷子

無限に近づき続けるはずの曲線が
次第に逸れていく
どこで間違えたの?
どこで壊れたっていうの?
戻れない 夢の続き


距離感乱し遠ざかるサイレン
ひとりきり夜明けのバルコニーから
見下ろす
無彩色に切り取られたグラデーション
吹き抜ける風 頬を撫でる

片耳に揺れる打ち捨てたピアス
あてもなく虹を待っている
断ち切ることもできず
忘れ去ることもできず
あぁ いっそ粉々に

壊して

片耳に揺れる打ち捨てたピアス
あてもなく虹を待っている
断ち切ることもできず
忘れ去ることもできず
あぁ いっそ粉々に