はじめに
この記事はこちらの記事の続編です:
癒しのローズピアノ
構想の段階
曲を作るときはまず最初の段階で大まかな曲調…テンポ・ビート感・主要なパート等を仮決めするのですが
今回はアップテンポ(160BPM以上[*])ただしメロはあまり詰め込まずパート数も多くなく空間を残す感じに、そしてローズピアノをメインに据えたいというふうに構想しました
なぜローズピアノかというと…単純に好きだからです、けっこう以前から
なおローズの音源はNative InstrumentsのKOMPLETEに含まれる SCARBEE MARK I を使用しました[†]
[*]最終的には170BPMになっています
[†]一部、同じくKOMPLETEに含まれるSCARBEE A-200(←ローズとは別のエレクトリックピアノ ウーリッツァー A-200をサンプリングした音源)もレイヤーしています
そもそもローズピアノ
ローズピアノ(Rhodes Piano)はピアノの代用品として開発されたエレクトリックピアノ(電気式ピアノ)の一種[*]で1940年代にハロルド・ローズ(Harold Rhodes)氏が開発しました
そもそもの目的は前線の兵士を慰安する目的だったとか
ピアノとはいうものの金属製の音叉をハンマーで叩いた音を増幅する仕組みであり音色はアコースティックピアノとは大きく異なります
かつてはフェンダー社と提携して製造・販売していたことからフェンダー・ローズ(Fender Rhodes)と呼ばれていました
詳しくは私が説明するよりもこのあたり読んでいただくのが良いかと
↓↓↓
ローズ・ピアノ - Wikipedia
エレクトリックピアノ - Wikipedia
[*] 電子ピアノ(=電子回路で音を生成)ではないです
有名曲
ローズピアノは1970年代頃からジャズ/フュージョン、ロック、ポップスなど様々なジャンルで使われていますが私が真っ先にイメージするのはチック・コリア率いるリターン・トゥ・フォーエヴァーの代表曲「スペイン」(1972)です
往年の洋楽ならビリージョエルの素顔のままで(Just the Way You Are)(1977)とか10ccの I'm Not in Love (1975) あたりが有名でしょうか
最近のJ-POPの楽曲ではポルカドットスティングレイのJET (2020) という曲がとても好きです (ポルカの曲はだいたい全部好きですが 笑)この曲のエレピはローズそのものではないかも知れませんがまぁ似た系統の音ということで
アレンジに関して
編成はシンプル
今回の楽曲「虹とバーガンディー」の話に戻ります
上述のように主要パートの数はあまり多くなく、ドラム、ベースを除くとローズを中心として左右からコード感を補うパッド系、その他はストリングスやクラビが時おり入る程度のシンプルな編成です
あとは歌詞に合わせてアラーム音(2種類)とかサイレン音を散りばめたり
さらにオケにスタッターの効果を加えたり[*] ボーカルチョップを入れてみたり[†]…まぁこのあたりは演出の領域
ただ完成してみるとそれほどローズメインという感じでもなく…この点はアレンジ力不足&プロデュース力不足かなぁと (-o-);;
[*]iZotopeのStutter Edit 2を使用
[†]Cubaseのサンプラートラックでスライスした声をGroove Agentで鳴らしてます
♭Ⅲ好き過ぎ問題
和声的にも基本的にはシンプルで複雑なことはほぼしてませんが ♭ⅢmM7というコードを何ヵ所か使っています
mM7は通常そんなに多用するものではないのですがそれはさておき ♭Ⅲ好き過ぎ問題 というのがありまして…
|Ⅲm7 |♭ⅢM7 |Ⅱm7 |〜
といった進行を私は使いがちで(♭ⅢM7は♭Ⅲ6となることもあり)過去曲でも使ってないほうが珍しいくらい[*]
[*]メロとの兼ね合いで♭Ⅲdimとなる場合もあり
♭Ⅲ6や♭ⅢM7を理論的に説明づけるなら同主単調からの借用すなわち準固有和音のひとつであって別に特殊なものではなく
♭ⅢM7(or6)の部分をⅥm7かⅥ7にすれば普通に強進行(四度進行)です
Ⅵm7の代わりに♭Ⅲ6を持ってくる進行は「カブトムシ」等のaikoの楽曲で多くみられることからaiko進行と呼ばれることもあるようです
Ⅵと♭Ⅲは五度圏でちょうど対面に位置するので、借用によって半音下降が生まれるという点ではいわゆるツー・ファイブ・ワン(Ⅱm7 → Ⅴ7 → ⅠM7)においてドミナント7thを裏コードで代用するのとちょっと似ています
ひと工夫
今回の曲でも制作の途中で手癖のように♭ⅢM7を使っていることに気づき…
工夫がなさすぎるんじゃないかこれ?と思った節もありちょっと変化を加えてみた結果
下記4小節目のように♭ⅢM7の後ろに♭ⅢmM7を挿入した形となりました
サビの後半にも同様の進行を繰り返しています
mM7は根音省略するとaugの構成音になるだけあってちょっと複雑な響きですがこの流れ、これはこれでどっかで聞いたことある気がします(けどわからない
まぁ所詮コード進行は既存の何かの組み合わせなので
おわりに
「虹とバーガンディー」という楽曲の制作に関して、今回は主に音楽面の背景について記しました