7th HopeのBlog〜五線紙のすみっこ〜

おもにボカロ曲・DTMの制作に関することなど

スノードロップ四部作のお話(クラウドナインの高度 〜silver lining〜 その2)

 

はじめに

この記事は先日のこちらの記事↓の続編です

7th-hope.hatenablog.com

 

上記記事で「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」という曲が四部作の最終章と書きましたが、今回はこのあたりのことを主に歌詞の観点から整理してみます

正直だれの為?という気がしなくもないですが…言ってしまえば主として自分の為です、制作の記録として書き残しておく為

ただ、楽曲を聴いてくださった方、興味を持ってくださった方がこれを読んで「あ、そういうことね」と感じてその上でまた聴いてもらえたら…という思いもあるにはあります

 

スノードロップ四部作とは

全体構成

前回の記事にも書いたのですが四部作の構成は下記のとおり:

  1. スノードロップと明日への歌 2016年12月発表、2021年2月リメイク版発表
  2. イニシャルMの残像 2017年9月発表
  3. タルト・タタンにさよなら 2017年6月発表
  4. クラウドナインの高度 〜silver lining〜 2021年7月発表 

といっても最初から四部作として作りはじめたわけではないです

ただ「スノードロップと明日への歌」という比較的物語性のある曲をつくったあと、なんとなく自分自身その続きを見てみたいという想いが芽生え、そうして「タルト・タタンにさよなら」「イニシャルMの残像」という曲ができました

そしてこの時点で「もうあと1曲つくって完結させたい」と考えるようになった…というのが実際のところです

 

ざっくり言うと

四部作とはいうものの、ある設定に沿った4つの楽曲があるというだけで別に詳細なストーリーがあるわけではありません

そして第1章「スノードロップと明日への歌」と最終章「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」の2曲が対になっているというのが骨格であって、途中の第2章・第3章はいわば枝葉のようなもの

なので4曲も聴くのはダルいという場合は1曲目と4曲目だけ聴いて雰囲気感じてもらえればまぁ大体OKです

 

ちなみに「詳細なストーリーがあるわけではない」とはいうもののざっくりした流れはこんな感じ:

  1. スノードロップと明日への歌:夢を叶えるためにもうすぐ旅立つ「僕」と歌で思いを届けようとする「君」(1番) → 異国の地で「君」の歌声を思い出しつつ頑張る「僕」(2番)、いわゆる別れと希望の歌
  2. イニシャルMの残像:異国で頑張ってはきたもののパッとしない「僕」、そしていつしか疎遠になった二人の仲、一転して陰鬱な内容の曲
  3. タルト・タタンにさよなら:パッとしないくせに現地で別の女の子と親しくなった「僕」が夢破れて帰国の途につく、というダメダメな「僕」が全開の曲
  4. クラウドナインの高度 〜silver lining〜:帰国便の機内で思いがけず「君」の歌声と再会、そしてひと時の交流…いろいろダメだけどなんとか救われる「僕」

 

こうして整理してみると1曲目以外は暗くてダメな部分ばっかりな感じですが...

ともかく以下の章では「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」の各パートに沿って、他の曲との接点を掘り下げていきます(以降、歌詞を引用する際「クラウドナインの高度〜」は青色、他3曲は緑色で表記します)

 

雲上での再会

 1コーラス目の冒頭、「僕」は航行中の旅客機の機内で、つまり雲の上で思いがけず「君」の姿と歌声に再会します

見覚えのある面影に目を奪われた
銀色の雲海の上のプログラム

 「タルト・タタンにさよなら」では以下のように滞在先で知り合った女の子との別れの場面が描写されるのですが、上記シーンはこのあと搭乗した帰国便の中という流れです

空港へと  向かう朝   レールの音
隣の席 最後だねと ひと言だけ 震える声
 (中略)
出発ロビー 揺れる髪 華奢な背中
雑踏の中 止まった時間  言葉なくし 立ち尽くす
 (中略)
響き渡る最終案内
君がふと 弾かれたように我に返る
突然にじむ視界
(「タルト・タタンにさよなら」より)

 そして続いて

上空3万フィート
君の歌声 あのリフレイン

とあることから、声だけでなく歌も聞き覚えのあるものであることが伺えます

 これは「スノードロップと明日への歌」の中で歌われていた歌なのでしょう

あと何回こうして君に届けられるだろう
言葉では伝えきれない思いを
旋律に込めて歌う 明日への歌を
 (中略)
僕とはまるで無関係なノイズの中に浮かぶ横顔と
明日への歌が
今もずっとループしてるんだ そして僕を支えてくれる
(「スノードロップと明日への歌」より)

また「雲の上」で「君」の歌声にめぐり逢ったというのは「イニシャルMの残像」での天使の梯子の場面が現実になった、とも言えます

雲間に架かる天使の梯子から
君の歌が聞こえた気がしたけど
(中略) 
雲間に消えた天使の梯子にさえ
面影を探してしまったけど
(「イニシャルMの残像」より)

 

 続くサビ部分でMVの中の「君」を見ながら「僕」は自問します

このスクリーンの中 君の髪はふんわり舞うのに
ねぇ 僕は何をしてきたんだろう?

機内プログラムでMVがオンエアされるくらいですから「君」は今や歌手として立派に活躍している、それに引きかえ自分は何もできていないじゃないか…というわけです

自分は飛べる いつか飛べるはず
そう信じでここへ旅立ったけど
今ではまるで世界から切り離されたエトランゼ
(「イニシャルMの残像」より)

そしてアドレス帳でMのページを開き途方に暮れる…

思わず開いたMの画面をスクロール
君の名前がにじんで流れてく

Mは言うまでもなく「君」のイニシャルです

イニシャルM 一文字だけでまだ先頭に現れる
君の名前を見て 胸が粟立つ画面にも
今では慣れたけど
(「イニシャルMの残像」より)

 

「私」の目線から

2コーラス目では「私」つまり「君」の目線から「僕」への想いが語られます

私の歌を聴いてくれた あなたの横顔に
この声は今でもまだ届いてるかな?
たくさんのことが変わったけれど
ずっと憶えてる いつもの帰り道
あの頃の未来には戻れなくても

スノードロップと明日への歌」の頃のことを今でも憶えているというわけです

雪どけの帰り道
柔らかな日差しにきらめく君
私は今日もこの歌を歌う
それが私にできること

(「スノードロップと明日への歌」より)

 

そしてこう続きます

積み重ねた願いも失くした夢も つまづいた道も
全部あなたが刻んだ証だから
あなたにしか描けない世界がきっとあるはず
羽を休めたらまた始めればいい

これは以下の部分と重なります

君はあと少しで旅立っていくね 夢だけを抱え
(中略)
季節がめぐり
思ってたのと違う未来がやってきたとしても
泣かないでいられるように歌うよ
(「スノードロップと明日への歌」より)

遠く離れて疎遠になってしまったけれどあの頃の気持ちを忘れたわけではないよ、ということですね

 

ひと時の交流、そのかたち

ところで2コーラス目で語られた「私」の想いはどんな形で「僕」に伝えられたのでしょうか? そもそも伝えることはできたのでしょうか?

どこまで実際に伝えられたかに関しては歌詞の中で明確にはしていませんが、そのあとのブリッジ〜落ちサビ部分から、リモート的な手段で二人がコミュニケーションをとったであろうことが分かります

モニター越しのひと時だけでも伝わる
リアルな絆を感じて

明日になればまた それぞれの朝
それでも遠く離れても
この空見上げ 寄り添っていたい

 

実はこの部分、つまり二人がどのような形で再会するのか?について長いあいだ決められずにいました

雲の上でMVという形で出会うというアイデアは第4章の検討を始めた最初の段階からすでにあったのですが、ストーリーとして完結させるためには実際にコミュニケーションがとれる形で二人が再会する場面も必要と考えました

当然、電話やSNSは考えましたが何かイメージと違う、しかしだからといって直接再会するというのも何か違うと思え…

こうして第4章の制作に着手せぬまま年月が経ってしまったのですが

 

そうこうするうちに突如、現実の世界に大きな変化が起きました

言うまでもなく、大切な人に会いたくても会えないというコロナ禍の世の中です

離れて暮らす身内に会いに行くことも、遠方の友人・知人と会うことも、推しの現場に行くことも各種イベントに参加することも…さまざまな種類の「大切な人」 と会うことが、ある時を境に極めて困難になってしまいました

しかしそうした中でも皆が工夫をして、それまではビジネスが主用途だったZoom等のツールを活用して、直接接触しない形で交流してなんとか関係を保とうとしている…

 

そこにヒントを得てモニター越しでの再会という形に決め、2020年の夏にようやく制作に着手しました

 

そうは言ってもこの曲で「僕」が帰国するタイミングが今のコロナ禍と明確に設定しているわけではなく(その場合、帰国自体も簡単ではない可能性がありますし)したがってそういう解釈もできるかも?と匂わす程度に留めているのですが

 

ちなみに2番Bメロのこの部分は

たくさんのことが変わったけれど
ずっと憶えてる

二人を取り巻く状況が時とともに変化したことに加えて

上述のように社会そのもののあり方も従来とは大きく変わってしまったということをそれとなく表している、という意図もあります

 

おわりに

以上、「クラウドナインの高度 〜silver lining〜」の歌詞を中心として、四部作の他の曲との接点について説明してきました

自分が発表した曲について、特に歌詞に関しての解説は基本的にやらないのですが今回は四部作ということもあり、長々とお付き合いありがとうございました

このあと、作編曲の観点からもあらためて記事にできたらと計画しています(数日後くらい?)

 

最後にスノードロップ四部作 各楽曲のリンクです:

1. スノードロップと明日への歌

 【YouTube】 https://www.youtube.com/watch?v=qgBR7qnWf1Q

 【ニコニコ】 https://www.nicovideo.jp/watch/sm38340188

2. イニシャルMの残像

 【YouTube】 https://www.youtube.com/watch?v=BWwcJ0xoHuM

 【ニコニコ】 https://www.nicovideo.jp/watch/sm31935848

3. タルト・タタンにさよなら

 【YouTube】 https://www.youtube.com/watch?v=WvyOB5Qk9Kg

 【ニコニコ】 https://www.nicovideo.jp/watch/sm31451543

4. クラウドナインの高度 〜silver lining〜

 【YouTube】 https://www.youtube.com/watch?v=yC3GyTOmrLE

 【ニコニコ】  https://www.nicovideo.jp/watch/sm39067474