7th HopeのBlog〜五線紙のすみっこ〜

おもにボカロ曲・DTMの制作に関することなど

ホントは怖い第1転回形 ~自作曲をリメイクしてみて思ったこと(2)

 

はじめに

この記事は下記の記事に書いた自作曲リメイク版「スノードロップと明日への歌 2021 ver.」の制作に関連して思ったことの第2弾です

今回はDTMというより少々音楽理論寄りのお話になります 

7th-hope.hatenablog.com

 

第1転回形はお好き?

いきなりですが皆さん第1転回形は好きですか? 

(第1転回形って何?と思った人は例えばこちら参照→ 和音の種類~洗足オンラインスクール   ひと言で言うと根音でなく第3音が最低音となるように音を積んだ和音のこと、「6の和音」とも呼ばれるのは最低音の6度上に根音がくるから)

なんとなく響きが荘厳というかクラシカルな雰囲気もあり適度な変化を出すことができるので私はけっこう好きです

 

2 + 4 + 4

下の譜面は自作曲「スノードロップと明日への歌」のサビ部分です(動画でいうと1分22秒あたり~)

第1転回形が何ヶ所かありますがそれについては後で述べていくとして

 

このサビメロは10小節のうち3~6小節と7~10小節がメロも和音もだいたい似通ってるのに対して1,2小節目だけ別物になっています

つまり「2小節 + 4小節 + 4小節」という構造でこれわりかし珍しいんじゃないかなと

 一般的には4小節が基本単位となってそれが組み合わさって8小節とか12小節とか16小節で楽曲の構成要素となることが多く…時にはそこに1,2小節追加されたり逆に短くなることもありますが

なので「4 + 4 + 2」とかは比較的ある気がするんですが「2 + 4 + 4」ってあんまりないような…これは後で気づいたらそうなってたってだけでだから何?って話では別にないんですけど

ていうかそもそも今回の本題と関係ない😅( ̄▽ ̄;)オイ

 

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ある日のできごと

 2月後半のある日、通勤途中の電車の中

アレンジ&ミックスがだいたい終わって完成に近づいた自作曲のリメイク版をiPhoneで聴いていた私はある瞬間、妙な違和感を感じました

…んんん? 何これ?

それは自分がイメージした響きとは明らかに違うものの、音が濁って不協和音に聞こえるミストーンという感じでもなく、あえて言うならばまるで

   和音じゃないような感じ?

 確かに音は積まれているのにそれらが響き合わないというか…

家に帰ったら確認せねば!

と思いつつ昨夜の作業内容を思い返していた私はあることに思い当たります

 

第1転回形の決まりごと

 和音の第1転回形には決まりごとがあります

それは一言で言うと「最低音である第3音を上声部に重ねない」というもの(ただし上声部の一番下にくるのはOK)

詳しくは「第1転回形 ボイシング」とかで検索すればゴロゴロ出てくるのでそちらを見ていただくとして、なぜこれがダメなのかというと

そうしないのが第1転回形の本来の響きだから

って事だと私は理解しています

したがってこの決まりごとは絶対的に従うべきとまでは言えないものの無視すると残念なことになる(場合がある)ということは知っておいたほうが良いです

 

問題の箇所

さて家に帰った私は遅い食事を済ませ、すでに日付が変わった深夜0時過ぎだったでしょうか眠い目をこすりつつCubaseを立ち上げます

そしてさっき違和感を感じた箇所を確認すると原因はすぐに判明します

あーやっぱり…ていうかぅゎこりゃひでぇ💦

問題の箇所はサビの7小節目(上の譜面でいえば3段目の先頭)の1〜2拍目

 F7/A → E♭6/G

の部分、そうですともに第1転回形(さらにその次もですが)

 

サビ後半のここはいわば曲のヤマ場、ストリングスの裏メロにさらにブラスのフレーズも重なってくるのですが

ストリングスにもブラスにも第3音が含まれているばかりか、右のほうで鳴っているガットギターはあろうことかトップノートが第3音、さらに奥のパッドにも第3音が含まれるという状態でした ( ̄▽ ̄);;;

 

一体どんなアレンジしとんねんオノレって話ですが…😅

元々この箇所は第1転回形ではなく基本形でした(4年前の原曲版でも同じ)

つまり直前の部分から書くと普通に

Gm7/C → F7 → E♭6 (ディグリーネームで書けば Ⅱm7/Ⅴ → Ⅰ7 → ♭Ⅶ6)

だったところ、その前日ベースのパートを全面的に見直していてここを

Gm7/C → C7,13/B♭ → F7/A → E♭6/G

とベースが下降してく風にしたらカッコイイんじゃね?と変更したところだったのです

しかしその日も深夜で疲れていたのか、ここで力尽き上声部を見直すことなく作業を終了してしまっていた…そのため第1転回形が本来の響きになっていなかった

それが電車の中で感じた違和感の正体でした

 

かくしてこの部分の全パートのボイシングを見直して第3音を含まないよう修正しこの問題は解決♪

以上、いや〜第1転回形って油断すると怖いですねっていうお話でした

 

そんなに単純でもなく

さてさて、上のほうで第1転回形の決まりごと=「第3音を上声部に重ねない」と一言で片付けましたが常にそうなのか?というと実は違っていて、まず マイナーコードはOKです

ダイアトニックコードに関して言えばこの決まりごとが当てはまるのは Ⅰ, Ⅳ, Ⅴ の主要3和音のみで、Ⅱm, Ⅲm, Ⅵm, Ⅶm-5 のマイナーコード(ハーフディミニッシュ含む)は対象外とされています

これについて少し考えてみると

例えば Amの第Ⅰ転回形 Am/C

これってほぼほぼ C6 と等価ですよね? なら上声部にCの音が重なっててもべつに構わないだろって話

 

ならノンダイアトニックの場合はどうなのかというと

メジャーコードの場合は主要3和音と同じ扱いです、セカンダリドミナントとかですね

一方マイナーコードはノンダイアトニックの場合も上と同じ理由でOKです…っていうかマイナーコードの第1転回形は通常、私は第1転回形で表記せずメジャーコードの6thで表記しますほとんどの場合(そのほうが分かりやすいので)

 

意図による面も

次にちょっと別の観点から、例えばキーCメジャー or Aマイナーでよくある

 G7 → E7(♭9)/G# → Am7

という進行について考えてみます

 

この場合のE7/G#はたしかに第1転回形であるもののこの進行は最低音が半音ずつ上昇することが重要なのであって第1転回形の響きを聞かせる意図は相対的に希薄であるといえます

また別のとらえ方として、E7♭9/G# のように短9度が乗っている場合は(or重ねても違和感ない場合も含め)第1転回形というより根音省略と見ることもできます

つまり根音を省略したため結果的に第3音が最低音になっていると…そしてドミナント7th♭9の根音省略ってことは要するにdimですね

となると上の進行は

 G7 → G#dim → Am7

とほぼ同じなので上声部にG#を鳴らしたらダメってことは別にない(そのかわり省略したはずのE音は鳴らすべきでない…G#dimの響きが意図したイメージと食い違わないならばですが)

一方「短9度なんつー陰鬱な響きはイメージじゃないゼ」という場合であっても依然として最低音が半音上昇することこそがこの進行が意図する最重要ポイントであるとするならば、やはりG#を重ねてもそんなに違和感ないってケースも十分あり得るかなと思います

 

要はそこでどんな響きを表現したいのか、意図次第、ケースバイケースってことかなぁと…私の個人的な理解ですが

 

なるべくなら気にしたほうがいい

ということでまとめると

メジャーコードの第1転回形を使うときは「第3音を重ねない」という決まりごとを気にしたほうがいいです、第1転回形本来の響きを表現するためには

そのためには本来の響きがそもそもどういうものか知る必要がありますがこれはもう自分で鳴らしたり効果的に使われている曲を聴いたりして掴むしかないですね

ただしそれに縛られなくてもOKという場合もありえるので最終的には意図次第

そんなところです

 

けっこう長くなってしまいましたがここまで読んでいただきありがとうございました

最後に楽曲動画のリンクをつけておきます

 


【初音ミク】スノードロップと明日への歌 2021 ver.【オリジナル曲】/ Snowdrop and a Tomorrow's Song for You (Feat. Hatsune Miku)